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民法が大きく改正されると聞きましたが,概要を教えて下さい。

1 民法改正の背景

 民法のうち取引関係等について定めている規定は1896年の制定以後ほとんど改正がされていませんでした。
 この間,日本の社会・経済は大きく変化しているので,民法の規定をその変化に対応させる必要がありました。また,民法の条文からは読み取りにくい解釈論が実務に定着しており,国民一般にとって民法が定めるルールが分かりにくいものとなっていました。
 そこで,1.社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに,2.国民一般に分かりやすい民法とするために実務に定着している解釈を明文化する作業が行われました。その主な内容は以下のとおりです。

2 「1.社会・経済の変化への対応」に関する改正

(1)消滅時効
 「消滅時効」とは,債権者が一定期間権利を行使しないときは債権が消滅するという制度です。現在は債権ごとに異なる期間が定められていますが,原則として「5年」に統一されました。
(2)法定利率
 「法定利率」とは,契約当事者間に利率や遅延損害金の合意がない場合等に適用される利率です。現在は年5%と定められていますが,これを年3%に引き下げた上で,市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入しました。
(3)保証
 「保証」とは,主たる債務者が債務を履行しない場合に代わりに債務を履行する義務を負うことです。現在は安易に保証人になった者が生活の破綻に追い込まれる事例があり,そのような被害を防ぐために個人が事業用融資の保証人になる場合に公証人による保証意思確認の手続きを新設し,一定の例外を除きこの手続きを経ない保証契約を無効としました。
(4)約款
 「約款」とは,大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項です。現在は約款に関する定めがありませんが,約款は現代社会に欠かせないものなので,「定型約款」に関する規定を新設し,定型約款を契約内容とする旨を相手方に表示していたときは,相手方がその内容を認識していなくても,個別の条項について合意をしたものとみなす一方で,信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効としました。

3 「2.国民一般に分かりやすい民法」とするための改正

(1)意思能力
 「意思能力」とは,行為の結果を判断するに足るだけの精神能力のことです。意思能力を有しない者がした法律行為が無効であることは現在の民法に明記されていないので,これを明記しました。
(2)将来債権
 「将来債権」とは,現時点では発生していないが将来発生する予定の債権のことです。将来債権についても譲渡や担保設定が可能であることは現在の民法に明記されていないので,これを明記しました。
(3)敷金返還,原状回復
 賃貸借の終了時における敷金返還や原状回復に関する基本的ルール(敷金は賃貸物の返還を受けた際に賃料等の未払債務を差し引いた残額を返還すること,賃借人は通常の使用収益によって生じた損耗や経年変化については原状回復義務を負わないこと等)は現在の民法に明記されていないので,これを明記しました。

4 施行時期

 「民法の一部を改正する法律」は,一部の規定を除き2020年4月1日から施行されます。

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