相続遺言事件

遺言無効と遺留分

事案の概要・争点

 被相続人Aが死亡しました。Aの法定相続人は子であるXとYです。Aは生前「すべての財産をYに相続させる」という内容の遺言を作成していました。この遺言を前提に,YはAから相続した不動産をZに売却しました。
 これに対し,Xは,Aの遺言は意思能力を失った状態で作成されたもので無効であるとして,Yに対し,遺言無効確認訴訟を提起しました。
 相続財産の買受人であるZは,本件訴訟の結果について利害関係を有していますので,Yの補助参加人として本件訴訟に参加しました。当事務所は補助参加したZの代理人です。

経過

 Zとしては,遺言が無効であると判断されると,Yから不動産の譲渡を受けることが不可能となり,損害を被る立場ではありますが,遺言有効の判決が確定すればそれで万事解決かというとそうではありません。遺言が有効であったとしても,遺留分の問題が残ります。
 遺留分とは,死亡した被相続人が保有していた相続財産について,その一定割合の承継を法定相続人に保障する制度です。本件の場合で言うと,死亡したAの子であるXには,相続財産の4分の1の遺留分が保障されており,これは遺言によっても奪うことはできないものです。したがって,遺言が有効であったとしても,Yは相応の遺留分をXに支払わなければならないのです。
 他方,遺言が無効という判決が確定すれば,法定相続分(XとYがそれぞれ2分の1)を前提に遺産分割をやり直さなければなりません。
 このように,判決に至った場合には,遺言が有効・無効いずれの結論であったとしても早期解決には至らないため,不動産買受人のZを交え,和解による解決を目指しました。

結果

 本件では,遺言が有効であることを前提とし,YがXに対し,相続に関する代償金を支払うという内容で和解が成立しました。
 この内容は,Yにとっては紛争の早期解決となりますし,Zにとっても,遺言が有効である以上,不動産売買契約は影響を受けず,不利益がありません。また,Xにとっては,遺留分に相当する金額を早期に獲得できたことになりますし,Zの売買代金から直接和解金を受領することも可能になるため,和解金を確実に受領できるというメリットもあります。

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